2013/02/03

1月10日(木)神奈川県立藤沢清流高校「美術館学入門」の授業発表が行われました

藤沢清流高校の皆さんとゴームリーの彫刻(2012.10.4) ©Antony Gormley


神奈川県立近代美術館と藤沢清流高校は、ここ5年間にわたり「美術館学入門」という授業名で連携授業を行っております。
生徒の皆さんに美術館に通ってもらいながら、美術館に親しんでもらえるような内容でカリキュラムを組み、美術館の場所を提供しています。
本年度は、1年の間に葉山館に3回・鎌倉館に1回美術館を訪れる機会がありました。移り変わる季節の中、各展覧会を鑑賞しつつ、様々な景色の中の美術館の様子を見てきました。

ゴームリーの彫刻を目指し散策路を下りていく生徒たち(2012.10.4)
ゴームリーの彫刻の前で学芸員が解説します(2012.10.4)
藤沢清流高校の生徒たちとゴームリーの彫刻の最初の出会いは2012年10月4日(木)。まだ秋の入口という季節、ゴームリーの像も夕陽を浴びながら皆を迎えました。

次に生徒たちが訪れたのは11月8日(木)。秋が深まると同時に一気に寒さが増し、冷たい空気を含んだ曇天のなかゴームリーと対面したある生徒がいました。その生徒は、海を眺めているゴームリーの像に親近感を抱き、中庭の場所を非常に気に入っている様子でした。初めての出会いから1ヶ月の間見ないうちに、季節の移り変わりとともに錆の色も変わり、全く違った表情を見せるゴームリーの像を見て、何か思うことがあったのかもしれません。

美術館講堂で行われた公開授業の様子(2013.1.10)

年が明けた1月10日(木)、「美術館学入門」の締めくくりとして、各生徒が美術館のお気に入りの作品について発表する公開授業が美術館にて行われました。
その中で一人の生徒がゴームリーの作品について語ってくれました。
彼女は最初にゴームリーの像に会った時、「やさしい安定感を感じた」と言います。父親のような、少し年老いた感じのする、ものさみしげな様子で海を見ている“師匠”と、美術館の屋根の上に、若々しい背中を見せる“弟子”という違いまで、彼女の解釈を発表してくれました。彼女は、見るたびごとに変化している海を見ている像の方に、よりいっそう「時の流れ」を感じたそうです。
ゴームリーの像の「頼りがいのある背中」を眺め、そして美術館の中で一緒に海を見たことは、自分自身の将来をも見つめるきっかけとなったようです。(C.S)(N.H)