2012/12/20

鈴木昭男氏による"点音(おとだて)"ワークショップが開催されました



12月16日(日)初秋を思わせる暖かな日差しのもと、午前・午後の2回に渡りサウンド・アーティストの鈴木昭男さんによるワークショップ「ゴームリーと佇む 『点音(おとだて)』」が開催されました。 →ワークショップ開催概要

タイトルにもなっている"点音(おとだて)"とは、鈴木さんが制作した耳と足をかたどったマーク(本ワークショップでは点音(おとだて)プレート)の上に立ち、自分の居る周囲の音風景に耳を澄ますこと。優しい語り口と印象的な言葉で綴られる鈴木さんのお話に引き込まれた後は、参加者それぞれが美術館の庭を歩き、自分の音を探しにフィールドワークを行いました。

途中、鈴木さんによるエコー(こだま、反響)を楽しむ音遊びの実演や、遺跡から出土された古代の笛を再現した笛のパフォーマンス、更に鈴木さんが1970年に制作され今もなお現役のそれはそれは不思議な音がする「アナラポス」という楽器のパフォーマンスを交えながら、陽だまりのように暖かな鈴木さんのお人柄に包まれ、ゆるやかな時間が流れていきました。




今回のワークショップの為に、鈴木さん自らの選定で、美術館の建物と葉山の自然音が調和し最も特徴的な音が聞こえる3つの場所に、3つの点音(おとだて)プレートが設置されました。参加者は鈴木さんと共に散策路を巡りながら、鈴木さんの優しい語り口に耳を澄ませます。


木々を渡る風音。強く弱くしぶきを上げ、絶えることなく流れる波音。悠然と空を飛ぶ鳥たちのさえずり。車やバイク、話し声など人々の営みの音。そして、音を遮る「壁」としてでなく、反響板や音に変化を与える装置として存在する美術館の建物。

鈴木さんの導きによって、それらすべての音の要素が調和して、ひとつの音楽を奏でている事に気づかされます。

海側のゴームリー彫刻後方に設置された点音(おとだて)プレートに立つ鈴木さん。
晴れた日も風の日も台風の日も、人の居る日も居ない日も、昼夜問わず、ずっとそこに立ち続けるゴームリーの彫刻作品が、毎日どんな音を聞いているのかを想像しながら、この場所に佇んでみるのも良いかもしれません。

海に近い場所の点音(おとだて)プレートを辿り開けた場所まで来ると、突然に周囲の音が変わることに気づきます。美術館に勤務する学芸員たちも、この発見に驚きを隠せませんでした。
長く慣れ親しんだ場所でも、意識して音を聞く事によって新しい発見が生まれる。ゴームリーが自分の彫刻作品を「今の時間を変化させる『触媒』となって欲しい」と語っていた事にも通じる共通点を感じました。


フィールドワークの様子。
参加者は思い思いのスタイルで、葉山の音に耳を澄ませます。

美術館の中庭で、2つの石を打ちつけながら、エコー(こだま、反響)を楽しむ鈴木さん。

1970年に鈴木さんが開発した"アナラポス"。制作から42年が経とうとしていますが、今もなお不思議な音を響かせます。片方が空いた鉄製の筒2つを、同じく鉄製のコイルで繋いだ"アナラポス"。スピーカーの役割をする筒の1つを参加者の方に持ってもらい、もう一方を鈴木さんが持ち、筒に向かって歌ってみたり、本体をこすったりコイルをはじいたりして音楽を奏でていきます。


どんな音かを言葉で表現するのはとても難しいのですが、森羅万象や宇宙を感じさせる音、とでも申しましょうか。機会がありましたらぜひ体験してみてください。






最後に。
鈴木昭男さんが制作し、今回のワークショップで使用した3つの点音(おとだて)プレートは、美術館の収蔵作品として、今後も鈴木さんご自身が選んだ3つの場所に設置されることが決まりました。
ワークショップに参加できなかった方も、美術館の散策路を訪れた際には、ぜひ3つの点音(おとだて)プレートを探してみてください。そして葉山の美しい風景だけでなく、「音」にも耳を傾けてみてください。定点におかれた点音(おとだて)プレートですが、その時に鳴っている音は全て違うはず。その時どんな調和が生まれ、どんな音楽が奏でられるでしょう?ぜひ自分だけの音を見つけにいらしてください。(N.H)